プリンスを聴かなかった若さに。

プリンスの訃報が入ってきた。先日、体調を崩して乗っていた旅客機が引き返して云々というニュースに接したばかりだ。詳しいことは分からないけれども、持病などあったのだろうか。
それにしても57はいかにも若い。そうか僕と同年代だったのかと驚きつつ、いやちょっと早過ぎる、スタジオで倒れていたそうだから新しいプロジェクトを手がけていたのだろう、死にたくなかったにちがいない、などと思う。

僕はプリンスのファンではない。彼がデビューした当時はプログレしか聴いておらず、ブラックミュージック全般に対する興味がなかった。その後ずいぶん聴くようになったけれども、プリンスはあまり聴かなかった。特に理由はない。強いて挙げれば、いつでも買えるので後回しにしてしまったというところだろうか。ロックのルーツであるブルースへの興味が勝っていたこともあるかも知れない。ファンク全般をあまり聴いていないのだ。

ブラックミュージックを敬遠していた時代は、もちろんそれがロックのルーツであると知りつつも、オリジナルとその受容の問題にこだわっていた。簡単に言えば「いかにオリジナルから離れるか」「離れているほどすばらしい」と考えていたのだ。

いや今でもそれは同じで、その辺りが僕の「コピーバンド嫌い」などにつながっている。
だがだからと言ってそれを理由にルーツやオリジナルを聴かなかったのは、馬鹿げていた。

40過ぎてから遅れを取り戻すべく興味の範囲が広がったけれども、若い頃とはやはり聴き方が違うので、殆どの曲やアーティストは血肉化しなかった。やはり10代20代に必死に聴いていたような情熱は取り戻せないのだろう。

こういう人間だから、本当はプリンスに「R.I.P.」などと言ってはいけないのだが、何となく依怙地に聴かなかった自分が彼の死に責められている気がして、だからそれに対する「R.I.P.」も半分は、ある。

プリンスと、彼を聴かなかった自分の若さに、弔意を。