『前々太平記』『前太平記』『太平記』その他

5月7日(土)

午前中は原眼科で検査。6月3日、7日に白内障の手術をするので、そのための事前検査。やらねばならんと言いながら、いささか憂鬱。

午後3時頃に事務所へ。注文していた古書が2冊届いている。もう1冊不在で入っていたので、郵便局に電話し、夜取りに行くことにする。いずれも数百円だが、少々買い過ぎた。反省(一応)。

郵便局で受け取ったのは、『前々太平記』。家に『前太平記』があるし、事務所には新潮社版の『太平記』もある。『保元』『平治』『承久記』もあるので、あとは『平家物語』を揃えればとりあえず1セットとなる。

べつだん理由があって集めているわけではないが、どれもエピソードがおもしろいので、それらをいくつか取り出してうまく紹介すれば、案外おもしろい読みものになるのではないか、とも思う。少し時間を作って挑戦してみようか。小説とエッセイの中間くらいの軽い読み物にしてみれば、文体練習にもなりそうだ。

だいたい太平記など読んでいても、そこかしこに怪異の挿話があって、楽しい。後半(巻二十以降)はさらに増えるらしいが、いま十九なので、もうそろそろだ。はやく読み進めたい。

だいたい世の中が最近やかましいのだが、大騒ぎしなくても案外勝手に収束しそうな気もする。しないかも知れないが。してもしなくても僕にできることは無さそうだから、一時穴蔵に籠って古典と音楽だけに浸る日々も、悪くないような気分になっている。アメリカはサンダースだろうがトランプだろうがクリントンだろうがTPP見直し、世界秩序維持からの撤退へと動くだろう。やり方が少々違うだけで、めざす所がそう大きく変わるとも思えない。孤立主義への回帰である。そしてその間に、おそらくは第一次世界大戦時期のヨーロッパのような状況が、アメリカ合衆国内や南北アメリカ大陸に産まれて来るだろう。ポピュリズムと平和主義と、強引な政治家の出現である。果たして二十一世紀のヒトラーが登場するかどうかは分からないが、出ても出なくても良くない時代となるのは間違いない。

USAが急速に求心力を失う事で、アメリカ大陸内のパワーバランスも変わるだろうし、世界的な混乱が生じかねない。ロシア、中国だけではない。ヨーロッパも決して安定しておらず、難民問題などはさらに大きな影響を及ぼすだろう。悪しきナショナリズム、他国に対して高圧的になるナショナリズムがすでに各国に台頭しつつあるし、経済格差の拡大や、アジア・アフリカにおける内乱の拡大は、各国の思惑により決して収束しないだろうから、ここからテロリズムの新しい動きが出て来るだろう。人は絶望的になりながらも生きようとするならば敵を倒さねばならず、敵と自分との力の差が大きすぎればテロに頼るしかない。やがて先進国内にもテロは生じるだろう。中東とは別に、先進国独自の理由によるテロが起るだろう。IRAユナボマーミリシアの例を考えるまでもなく、必然である。

日本はさらにガラパゴス化するに違いない。残念ながら現在の政治状況は、右も左もただ題目だけを唱え、決して本当に相手を圧倒しようとしているとは思えない。だが中途半端な対決は生煮えの結果しか生むまい。近代以降の日本は、自ら決定的な行為を行う意志や力にかけているので、全ては外圧に頼らなければ変革は起きない。だが、最早どこも外圧となってはくれない。国内の活動家が、外国の動きを外圧と捉えないだろう。ぬるま湯に浸っていたいから、いつまでも無視するだろう。自分に都合良く解釈し、行動に出ることをしないだろう。もちろん改憲はなされるかも知れない。自衛隊国防軍になり、戒厳令が制度化されるかも知れない。だがそれらは制度として決定するだけで、実際に稼働する事はまずあるまい。よほどの外圧がない限りは。そしてよほどの外圧があるということは、それは国家存亡の危機であり、そんな事態になれば何の準備もできていない日本は、あっというまに瓦解するだろう。

おそらくは、パラダイムシフトが必要であり、おそらくは、その時期が近づいている。だがそれは良い事だけではなく、それどころかほとんどの人にとっては悪いことかも知れない。いま、グローバル経済が機能を停止したら、世界は大混乱になるだろう。だがパナマ文書が本格的に暴露されれば、一つ間違えれば経済は一瞬にして停滞するだろう。そうなれば、あやういところでバランスをとっているブラジルやベネズエラ、アフリカの諸国などは、たちまち経済危機どころか経済崩壊になり、そこに麻薬カルテルや反乱組織などの台頭を招きかねない。彼らが極端な社会主義的経済政策をとれば、暗黒の時代までもう一歩かも知れない。経済は今や世界中で連動しており、どこかのバランスが崩壊すれば全体が崩壊しかねないからだ。其の途上で北朝鮮が暴発したら?

まあ、余計な考えはやめよう。今年後半がどうなるか、それによって今後どんな時代になるかが決まるように思える。それまでに、せめて目は治しておこう。